「失敗したときにうまくごまかせるようになったらプロの役者として一人前なんやで」とお酒を飲みながらよく話してくれはった。
さてある日の公演中(『冒険者たち』)。
おっちゃんのガクシャと、ヨイショとガンバとチュータが船底で出会ってしゃべってるところへ、私のイダテンが物陰から飛び出して「イカサマ知らねえか?」という場面。
私はスタンバイして出番を待った。物陰で人形を構えて、出のキッカケゼリフを待っていた。
が、一向にそのセリフが聞こえてこない。
なんか、ぼろ船だとかこんなんでだいじょうぶかとか、ガクシャとヨイショが愚にもつかないことをしゃべってる。
つぎの瞬間、出をトチった自分に気づいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)
大失敗にカァーっとなり、ガバッと飛び出したイダテン(私)にガクシャの優しい声がかかった。
「おお 来たか来たか」
またある日。
かなりおっちゃんの晩年(飴買い幽霊)で六兵衛役のおっちゃんが、セリフを一瞬忘れはった。
無くては困るセリフやったので、黒子頭巾の下の私は人形は保持したままそっとおっちゃんにセリフを耳打ちした。
その瞬間人形の六兵衛さんが
「ああ、そうそう」
おっちゃんと芝居をするのはほんまにおもろかった。私もそちらに行ったらまたいっしょに芝居してな、おっちゃん。
こずえ事務所で企画している今年の夏〜秋の予告です。
(まだもくろみの段階です)
その他、
など、スペシャル講師を招きながらでっかい人形劇の世界を追い求めていきます!
こんなんやってほしいという要望もお寄せください
演出家って、お客さんの中でも私の最も近くにいて最も喜んでくれ楽しんでくれる人。
だから私は演出家を喜ばすために、あの少年のような目を喜びで踊らすために、目をみはって「あんたすごいな 魔法使いみたいや」と小躍りしてもらうために、一生懸命芝居してきたような気がする。
こずえ塾を受講された河合千重さんの文章です。
人形劇のワークの中でこずえ先生が言ってた事。
小さい頃の五感の記憶…。
味覚でも
視覚でも
聴覚でも
思い出してみた時に、
きっと、その時の気持ちもよみがえっているはず。
うれしかったり、悲しかったり、
いややなあ…とか、さみしいなあ…とか。私の幼い時の五感の記憶は、
パイン缶の思い出。初めてパイナップルの缶詰めを食べたのは、小学校へ上がる前。
妹はまだ生まれてなかった。アイボリーな感じのカーテンに囲まれた部屋で、
従兄妹の家族と一緒に。
おじちゃんがベッドに寝ていた。
「よくきたね」
と小さな声でおじちゃんが言った。
わたしは、おじちゃんの枕もとのパイン缶が気になって気になって…。おばちゃんが、缶切りで開けてくれた。
黄色いパインの色と甘い匂い…。
パインを一切れずつもらう。
甘酸っぱい。
こんな甘いものを食べたのは初めてで、
頭がくらくらした。
涙が出そうになった。生きているおじちゃんに会ったのはそれが最後だった。
お葬式。
遺影の中で笑ってるおじちゃんの顔を見て、
あの時ベッドで寝ていたおじちゃんの顔を
ちゃんと見てなくて、
パイン缶ばっかり見ていたことを
少し後悔した。今でも、
パイン缶を食べると、
病室の風景を思い出す。
この文書は、ウェブサイトえだまつこずえ事務所に掲載されたものです。